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ブ・ウェル等の小規模潅がいの経済性が指摘されている。管理要因は、世界の途上国の潅がい設備の半分以上が現在修理が必要であり、かつこれら設備が設計能力を大幅に下回って運用され、多くの水が浪費され、また水の滞留や塩害が適切に管理されていないということである。環境要因は、世界の潅がい面積の数10パーセントで発生しているとされる塩害、潅がい水に関連した疾病、ダムによる環境破壊、水に関わる生態環境の価値などである。
農業は世界の淡水供給の3分の2を使用しており、この農業用水資源にも強い制約が働いている。世界各国の経済成長からくる同用水の工業・生活用水への転用、アメリカ、中国北部、インドなどでの地下水の農業用水への過剰利用による枯渇、12)そして上述の潅がい投資の停滞などである。筆者の80年代後半のアメリカでの調査で、環境保護運動に規定された潅がい用ダム建築の困難からくるカリフォルニアの水不足とやテキサスでの地下水位の稲作用汲み上げによる過剰低下に遭遇した。
耕地、潅がい面積、水の制約の下穀物供給の増加は単収に頼らざるを得ない。緑の革命は小麦とコメの単収と生産量を66年代から82年の期間、表1が示すようにかなり増加させ、これら穀物の単収は過去30年ほどの期間全体で見ても年率それぞれ2.7%と2.2%とかなり増加した。しかし穀物の単収の増加に最近制約が見られる。80年代の穀物の単収と生産量の増加率が世界平均で、表1が示すように70年代後半と比較して急減し、66〜74年と比べても低下している。コメと小麦の新品種の潜在(理論)単収は旧品種に比べ明らかに上昇しているのだが、実験圃場や農家圃場では低下する場合がある。13)国際稲作研究所(IRRI)やアジア各国の稲作研究所の試験研究や農家圃場の新しいコメ高収量品種の単収は最近停滞ないし減少している。14)アジアでは、稲の3期作に象徴されるように水田の過剰な集約化問題があり、米と麦の二期作では単収の停滞が見られ、麦作では要素生産性の低下が起こっている。15)
世界の農業大国である中国の穀物単収と生産量の動向を見てみよう。穀物単収はFAOデータによれば61年のヘクタール当たり1.9トンから94年には4.5トンヘと戦後大幅に増加した。反収は増加したのであろうが、この94年の単収はかなり高すぎると筆者は考えていた。最近中国科学院の調査により中国の耕地面積統計が驚くべきことに40%ほど過小推計になっていることが明らかになった。94年の単収をこの過小推計分

 

 

 

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